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1|書道家・冬舟の名残

季舟庵は築200年以上の古民家で、江戸時代から暮らしが受け継がれてきました。そして、2010年頃までは、書道家・冬舟が暮らし、創作活動の拠点としていました。
冬舟は、いすみ市内の学校で校長を務めた後、引退して書道家としての道を歩み始めました。正統派の書にとらわれず、立体造形や絵画を取り入れた自由な表現を追求し、独自の作風を築きました。

現在も、館内では冬舟の作品を見ることができます。

・Goldengrass:
庭園に置かれた大きな造形作品です。秋の夕方に穂が夕陽を受けて染まり風に揺れる、その光景を切り取った作品となっています。

・池を「見るための池」:
季舟庵の裏手にある山の生態系を取り込んだ植栽、典型的な和風庭園と対比するように制作されたコンクリートの造形作品です。浄化槽の壁には、彼の書を刻んだ碑が埋め込まれています。

「夏の間」には、冬舟自作の掛け軸がかけられています。また、「秋の間」には、冬舟が愛用したアサヒペンタックス67とレンズ、そして彼がよく眺めていた《月の沙漠》(平山郁夫作)が掛けられています。

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2|過去と現代をつなぐ古民家

季舟庵の建物は、書院づくりをベースとした古民家の設計になっていますが、この姿になる前は、ここで暮らす代々の住人が改修や増築を重ねたことで、今とは異なる姿になっていました。季舟庵としてリノベーションするにあたり、「原点回帰」をコンセプトに、建てられた当時の姿を取り戻すための改修を行いました。それは「減築」と呼ばれる手法で、増築部分を取り除き、構造体を主体としたシンプルな建物にしながら、新たに部屋を設けたり、水回り部分を現代的に刷新しています。一方で、明治時代、冬舟の父の代で改修された屋根(茅葺き屋根から銅板葺き屋根への変更)や、神棚などはそのオリジナルの姿のまま残っています。

また、改修はできるだけ地域の暮らしを感じる工法や、極力新たなもの加えない方法で進められました。例えば、新たに設けられた部屋の壁には、漆喰(石灰を主成分とする天然素材)を、職人が丁寧に塗り上げています。漆喰は“呼吸する壁”とも呼ばれ、湿度を自然に調整するほか、防火性にも優れ、江戸時代には隣家への延焼防止として住居によく用いられていました。各部屋の扉では、旧家で使用されていた引き戸が加工され、再利用されています。

それらと対比するように設計された、土間や浴槽の現代的な素材や設備によって、趣と現代性を兼ね備えた空間デザインとなっています。

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3|いすみの風土が反映されたダイニング

離れにあるダイニングは、もともと蔵として使われていた建物です。ですが、昭和の時代にここで生活が送れるように、内張のクロスや床板を貼るなどの改修が施されました。使われなくなったことで壁は剥がれ、床は抜けた状態となっていたこの場所をレストランとして活用するために、内装を解体している最中、壁の内側から、立派な版築の壁が現れました。版築とは、藁・土・石灰を突き固める伝統工法です。いすみは古くから米作りが盛んで、藁や粘土質の土は容易に手に入る地域だったため、蔵におけるこの技法は、地域性を象徴する建物でした。そこで、当初の設計を変更し、この版築壁を活かしたダイニングに仕上げました。

壁ともう一つ特徴なのが、建物の中央に配置された最大10人が一堂に座れる大きなテーブルです。滞在いただくゲストが、全員で同じ食事を囲み、交流できる空間としてデザインされています。大きなガラス戸の先には、大谷石(栃木県で採掘される加工性の高い凝灰岩)を敷き詰めたテラスを設置。星空の下でBBQや焚き火を楽しめます。

また、ダイニングに隣接する建物には、本格フレンチが提供可能な厨房を完備し、この設備を活用いただける料理人の方のお越しをお待ちしております。※キッチン棟の一部(IH・シンク)は利用可能ですが、ご宿泊の方の厨房設備の利用は、ご遠慮いただいております。

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4|万木城の面影が残るテラスと星空

ダイニング棟の基礎には、蔵が建てられた当初からテラスにも敷かれている大谷石が使われています。この石は、その硬度と加工のしやすさから、戦国時代には多くの城で用いられていました。一方で、その価値の高さから、城が落城する際、家臣たちは殿様から資産として大谷石を賜わり、それを生活の足しにしていたと言われています。冬舟の先祖は万喜城の家老であったということ、万木城が落城した城であるということから、ダイニング棟に使われている大谷石は、万木城の落城時に殿様から賜ったものではないかと想像できます。なぜならば、外房では石が採取できる場所は少なく、硬度の高い大谷石は希少でした。先祖が資産として承った大谷石を代々保管していて、それをこの建物の基礎に使ったのではないかという可能性を思うと、江戸時代から続くいすみの歴史を感じることができます。

蔵を改修する際に、この物語を感じていただけるように、そして天体観測をお楽しみいただけるように、大谷石をふんだんに使用したテラスを新設しました。ここから見える南の方角には太陽系惑星の軌道があり、金星や木星などを見ることができます。そして、反対の空には、カシオペア座があり、北極星に加えて、澄んだ夜には地球から約230万光年離れたアンドロメダ銀河を肉眼で観測することができます。

地域の歴史風土や自然、壮大な宇宙の流れを、テラスにてお楽しみください。

ロゴ
季舟庵

kishu ann

isumi

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